過去3回映画祭を開催する中で、世の中のいろんな人の生き方に触れる機会をいただくことができました。
知らないことを知ると、「なるほど」と納得したり安心したりする一方で、その現実に衝撃を受けてしんどい気持ちになることもあります。また一歩知れば、それまで感じていたこと、思っていたことがすっかり逆転してしまうこともありますし、また一歩知れば、誰かの顔が浮かんで、適当な言動や安易な思い込みでその人を傷付けたくないという気持ちにもなってきます。
そうして知れば知るほど、世の中には無関係なことなど一つもなく、すべての物事は実は根底でつながっているのだと感じます。そして同時に、“当事者”と呼ばれている人たちは、実は誰一人として一括りにはできない、それぞれにまったく違った人生を歩んでいるということに思いが及びます。それでも、自分は何も分かっていないという自問自答を繰り返しながら、分かろうとする努力を続けることが、わたしたちが隣にいる人と一緒に生きていく上でとても大事なことなのかもしれません。
映画を観ることは、そうしたいろんな気付きの最初の一歩を与えてくれます。しかしそこから先は、人と人との個別具体的な関わりが必要なのだと思います。だから映画祭も「知ること」の歩みを止めず、人と人とが出会う場を、これからも作り続けたいと考えています。ここに集ったわたしたちだからこそ、できることを。
さあ、今年も吉岡宿にしぴりかの映画祭の開幕です。
実行委員/我妻和樹